藤沢商工会議所会頭就任

2010年(平成22年)11月1日の第22期の会頭就任にあたっての所信表明文を掲載することにする。

「私は、塩田豊永会頭の後任として第22期、第6代の藤沢商工会議所会頭として選任を受け、その重責を負うことになりましたが、改めてその責任の重大さを認識して身の引き締まる思いでおります。ここに就任するにあたり所信を表明致します。

私は今、直面する使命を謙虚に受け止め、多くの先輩、同僚から戴いた信頼を糧に、全力を挙げて努力する所存です。過去多くの先輩達は、時には決して楽でない新しい時代を切り拓き、今日の私達藤沢商工会議所に安定と発展をもたらしてきました。この功績に報い、また汚さないよう、不撓不屈の精神をもって、創造性豊かに、柔軟に物事を考え、次世代に立派に繋がる、時流が求める事業を完遂していきたいと思います。元気な藤沢を役員・議員各位とともに創るため、今後とも関係者各位の倍旧のご支援とご鞭撻、ご尽力を賜ります事をお願い申し上げます。

それではまずはじめに、会議所運営にあたっての基本的な見解を表明します。

会議所は、法律で定められた商工会議所法の規定に基づく地域経済総合団体ですが、その目的とするところは、地域における商工業の総合的な改善、発展に寄与することが原理、原則です。従って、この原則を忠実に実施するには、会議所に所属する議員の活動と職員の活動の二本立てとなると思います。

第22期の新議員各位におかれましては、各自所属する業界、業種の代表としての認識をもって、新時代を切り拓く会議所活動の遂行にあたることを期待しております。

特に、会議所の使命であり、前期まで最重要活動として鋭意努力してきた、既存産業や中小小規模企業の経営振興に向けた諸施策の実現に対し、行政に対する政策提言機関としての責務を果したいと存じます。さらに、会議所の継続した重要事業として、永年懸念事項となっている財政基盤の確立については、会員増強運動が求められております。そこで従来の取り組みに加えて、会員事業所と会議所との距離を縮める施策をより強力に実行する必要があります。会員事業所との密なる交流事業や、会員にメリットを与えうる販促事業の企画立案等、議員各位の英知を結集して、より具体的な行動を起こしたいと思います。職員は、会議所会員は無論のこと、国や県、また藤沢市行政からの負託により、忠実に職務を果たす使命があり、会議所活動の中心的役割を担っていると思います。そこで、会議所活動がより活発になるかどうかは、職員の資質が非常に重要となります。ここに、私は人材育成と人材創造をまず第一に掲げ、金井正志郎専務理事、神田務常務理事の指導により、職員の資質を高め、創造性、柔軟性、機動性、勤勉性、そして明快、明朗性のある職務の遂行を目指し、会員に喜ばれる素晴らしい会議所にもう一段前進することを運営方針の柱にしたいと思います。

昨今の我が国経済は、社会構造が先進国の中でまっ先に少子高齢化社会を迎え、かつ1990年代の我が国バブルの崩壊から、失われた20年と云われる程の停滞に遭遇し、未だその影響が尾を引き、デフレ状況が脱却出来ていない深刻な環境に置かれております。

また、2008年の世界金融、経済危機、いわゆるリーマンショックから世界経済は徐々に立ち直ってきましたが、最近の欧州の金融危機から次第に米国の経済の減速懸念に焦点が移り、円高が進む等、我が国の経済は先行き楽観を許さない状況となっております。

我が藤沢市の経済は、当然の如く我が国経済の状況に影響されますが、特に懸念される事は、製造業を主体とした産業の空洞化が再び顕著に起きるかどうかです。かっての円高局面に対処した輸出産業の競争力強化と、グローバル経済に勝ち残るための発展途上国の低賃金を求めた低コスト化政策で、製造業の国外シフトが盛んに行われたことは記憶に新しいと思います。

我が藤沢市は、古くから工業立地市として、有力な国際企業はもとより、国内製造業がかなりの企業数で進出しておりますが、グローバル競争に対処するための移転や、競争力に後れを取った企業の撤退等、このままの経済状況が続くとしたら、不安の種に限りがありません。

また、非製造業につきましては、国内の経済状況に大きな影響を受けることは自明の事実です。

我が藤沢市は、五つの都市拠点と数多くの地域拠点、そしてそれらに立地する商店街や沿道型事業等が、都市基盤として骨格を成しております。これらを構成する産業は、藤沢市経済に大きく影響を与えたり与えられたりして、密接な関連を持っております。

湘南の中核都市藤沢の都心である藤沢都市拠点については、かっては先進駅前都市構造として、全国の注目の的であったものが、近年は大型店の撤退や業態変更等により、乗降客数だけは以前にまして増加しておりますが、商業集積は衰退を余儀なくされているのが実態であります。

副都心に位置づけられている湘南台都市拠点におきましては、鉄道三線の交流拠点として、次第に都市インフラ整備が充実してまいりましたが、地元の産業の活性化については、乗降客の駅周辺地域への拡散が今一つで、地元企業の懸案事項となっております。

辻堂都市拠点につきましては、湘南CXとしてあらたに急激な発展を遂げつつあります。主力の複合都市機能ゾーンの開店に伴う藤沢市商業の活性化への期待と、それが及ぼす藤沢市域の商業者等への影響とで、今後の藤沢市の活力の行方を見守る状況にあります。

その他片瀬・江の島地区の都市拠点につきましては、観光協会の尽力でより一層の集客力の向上を目指している処で、現状は素晴らしい発展段階にあると思います。ただ、藤沢市全域の観光を俯瞰したとき、北部で観光果樹農園等が次第に充実しつつありますが、藤沢商工会議所の役割として、さらなる観光拠点の形成と地域振興を図る課題に挑戦する必要があると思います。

健康と文化の森の都市拠点は、慶応大学を中心として発展してきましたが、これから一層の発展が期待される地域です。

その他地域拠点や商店街等は、地域コミュニティの核として、藤沢市民には無くてはならない存在ですが、近年の消費構造の変化と大型商業施設の出店等により、次第に何かと時流から取り残され苦戦が続いている状況にあります。

沿道型事業は、その時々の専門店の発展段階やライフスタイルの変化等により、出店密度に変化をもたらしますが、一方では道路ネットワークの欠くべからざる存在となっており、経済・社会の動向により大きく影響を受けます。

こうして、我が藤沢市は、製造業、非製造業ともに我が国経済が抱えているのと同じ様に大きな課題を抱えておりますが、藤沢商工会議所は地域経済総合団体として、これらの課題の解決に向かって藤沢市行政と密接な連携を取りながら活動していく使命があります。

これからの藤沢商工会議所の目指す方向は、前記の課題を解決する糸口を見つけ出し、藤沢市商工業の活力ある事業活動を推進することにあります。

まず、我が藤沢市の産業に無くてはならない製造業につきましては、グローバル競争に身を置く大企業を始め、個々の中小企業が競争力を強化し、活発な事業活動を展開してもらわなければなりません。そのためには、技術革新は無論のこと、時流に沿った新技術、新商品の開発が必要です。個々の企業の自助努力が真っ先にもとめられますが、外的支援として、藤沢商工会議所は、藤沢市行政や湘南産業振興財団と連携を密にして、場合によっては神奈川県にも協力を仰ぎ、情報の提供、産学官の連携事業の推進にその役割を果たす必要があります。このために、現在産業拠点施設の建設が計画されておりますが、施設の早期完成の方針は揺るぎない事柄ですが、その前に藤沢商工会議所と湘南産業振興財団、藤沢市行政が密なる協議を行い、市内産業の活力ある事業活動を支援するための、各々の果たす役割を明確化することが先決事項と思います。関係者の合意のもとに早急に協議機関を創る事を推進します。

次に、我が藤沢市の産業が活発な事業活動を円滑に展開出来るためには、何と云ってもインフラ整備が最も重要です。現在は時空を超えた広域交流が事業活動の原則となっておりますが、道路ネットワークをさらに充実させる事を強力に推進しなければなりません。現在取り組んでいる圏央道や横浜湘南道路の開通から高速横浜環状南線、横浜横須賀道路への連結や、綾瀬インターチェンジ建設促進、長年の懸案事項である横浜藤沢線の片瀬地区への延伸等について、早期実現に向けて引き続き働きかけ、さらには圏央道の開通見込みに対応して、広域交通ネットワークの要となる厚木藤沢線のJR以南への延伸の実現に向けて働きかけを強めることを主目標に掲げます。

もう一つの産業インフラ整備として、西北部地域のまちづくりとして、藤沢市が推進している産業の森の開発計画や、健康と文化の森、慶応大学地域へ産学公の連携のもと、新産業創出と研究開発の集積地の形成への支援に取り組むことを図ります。特に市内既存企業の移転に関しては、市内残留を図り、希望があれば極力新産業の森等に誘導出来るよう働きかける必要があります。

一方、藤沢市の都市構造を決定づける都市拠点の活性化を、藤沢商工会議所の最重要事業に位置づけたいと思います。

まず、藤沢都心部におきましては、昨年来、藤沢市行政内に藤沢駅周辺地区まちづくり担当の部課が設置され、漸く藤沢駅周辺地区再整備構想検討委員会が立ち上がりました。この検討委員会の基本構想、基本計画の策定にあたって、藤沢商工会議所として意見の具申は勿論のこと、出来うる限り後方支援をはかり、藤沢駅南北まちづくり協議会と連携を深めながら、にぎわいと活力ある都心部が出来るよう事業の推進を図ります。さらにこれを機会に、藤沢商工会議所の長年の懸案であった奥田線道路計画の実現を働き続けます。

湘南台副都心につきましては、相鉄線の延伸計画に注目し、地元商業者と連携して、中心部の乗換駅構造から駅周辺への乗降客の拡散の方策に取り組みます。

辻堂地域の都市拠点は、いよいよ今秋湘南CXのA1街区である複合都市機能ゾーンの開発が始まり、来年秋に完成予定となっております。この地域は質の高い商業機能やアミューズメント、スポーツ施設等を併設した商業集積を目標としております。出来るだけ市内地元事業者や商業者に出店出来るよう取り組んでまいりましたが、この成果に期待したいと思います。これからの市内商業環境に活力を育むには、藤沢市行政や藤沢市商店会連合会と連携、協議し、各地域の商店街や地域拠点の活性化策を見い出していかなければなりません。

新たな村岡新駅構想は、今後の関係当局や地元の街づくりの協議の推移を見守る必要がありますが、周辺が工業集積地や重要な研究開発地区に変貌しておりますので、これらの企業群の活力ある事業活動が支援できるJR駅のあり方を行政に提言出来れば良いと考えております。

その他、新たな施策の展開として、広域連携を目指した隣接商工会議所、商工会との密接な交流、意見交換や協議の場を設置する事を積極的に試みたいと思います。